教員紹介vol.18  劉 煐杲 先生

毎回、本ブログ上で本学通信日本画コースの教員お一人を
ピックアップし、作品と共にご紹介していくこの企画。


第18回は、劉煐杲 先生です。
東京・模写をご担当頂いています。
先生のルーツである東洋画(韓国画
)と、来日して学ばれた日本画との狭間で育まれた5作品
作品に添えて頂いたコメントからは描かれた当時の情景とともに、写生に費やされたゆったりとした時間、重要性が伺えます。
これから風景課題に取り組まれる方にも、是非参考にして頂きたい作品群です!
--------------------------------------------------------------------------- 

劉 煐杲   Yu Yungko
 担当科目:2年次科目


















膠で顔料を溶き、和紙や絹に描くという日本画の絵画技法は、かつて韓国にもあったものです。途絶えてしまった自国の文化について、唯一その文化を残す日本で勉強したいと思い、来日したのは20年も前のことです。日本画の伝統文化、技法材料の尊さは、もしかしたら日本の方より分かっているかもしれません。ただそれを思ったように扱い、表現し得ることは容易ではありません。描く度に思うようにできた、できなかったと一喜一憂する日々です。


--------------------------------------------------------------------

【作品紹介】






「風景」


来日して初めて描いた日本画です。大学院の受験の際に日本画を提出しなくてはならず、都内の予備校で無理いって習わせてもらいました。つたない日本語でのやり取りでしたが、講師の方とは絵を介して心が通い合ったように思え、日々の難しい日本語の勉強も乗り越えられた記憶があります。






澄懐 (ちょうかい)



蓮はよく題材にします。今は観光地になってしまいましたが、埼玉県の行田市に古代ハスの里というところがあり、朝方何度も取材に行きました。今は観光地化されてしまい整備されてしまいましたが、取材し始めたころは蓮だけではなく、葦なども生え、より自然でした。蓮を描きつつも、水面の輝きを表現したいと制作しました。







欣躍 (きんやく)


この作品を描くために1週間すすきの叢に通い詰めました。毎朝イーゼルを設置し、自然の中に身を置き、スズメが警戒しなくなるくらい同化して鉛筆をひたすら動かし続ける。至福の時です。その時の感動をとどめることができればと思い描きました。







晨鐘 (しんしょう)


韓国では東洋画(韓国画)を専攻していました。水墨画に淡彩を添えるという表現方法です。自分に培っている水墨表現をベースに、それを日本画絵具に置き換え表現してみました。白黒のモノトーンの世界なので、表現したいものはストレートに伝わるかもしれません。鐘の音が響き渡るような絵にしたいと思い描きました。








白日夢 (はくじつむ)


韓国では人物を題材とする作品を描くことが多かったのですが、日本画を学んでからは特に緑青色に魅了され、植物を描くことが増えました。久しぶりに人物を描きました。人物画ではないものの、マネキン人形を借りて、自分を描いているのだと思います。三面鏡の前にたたずむ私は、過去・現在・未来を去来しているようで、実際なのか夢なのか、自分がどうしてここにいるのだろうかと思う時があります。






--------------------------------------------------------------------

【プロフィール】


劉 煐杲 (Yu Yungko)

1966年 韓国/全羅北道金堤市生まれ
1993年 韓国弘益大学校美術大学東洋画科卒業

1999年 東京藝術大学大学院 文化財保存学 保存修復日本画修士課程 修了
    再興第84回院展「軌跡」初入選
2000年 第55回春の院展「開路」初入選
2003年 第58回春の院展「澄懐」出品 外務大臣賞・奨励賞
2006年 第61回春の院展「欣躍」出品 奨励賞 (‘08奨励賞) 
2008年 再興第93回院展「晨鐘」出品 奨励賞
2009年 個展「劉 煐杲 日本画展 –HANA-」 (銀座 みゆき画廊)
2011年  『采の会』日本画展 (上野松坂屋・名古屋松坂屋)

現在  日本美術院 院友   
    東京藝術大学社会連携センター Art&Science LAB 特任研究員
    女子美術大学・京都造形芸術大学非常勤講師