【制作の基本/京都】日本画制作の流れ

こんにちは。日本画コース非常勤講師の佐竹龍蔵です。

今回の記事では、6月に行われた1年次科目「制作の基本」の授業風景とともに、本学日本画コースで学べる日本画制作の基本的な流れをご紹介します。
授業を受けた方には簡単な復習として、これから入学を検討されている方には日本画を知る一つのきっかけとしてご覧いただければ幸いです。


制作前の下準備

日本画の基底材(=支持体)には様々な種類の和紙や、絹や綿などの布、木の板など多様な素材が使われます。現代の日本画制作では主に雲肌麻紙(くもはだまし)や高知麻紙といった「麻紙」に描かれることが多く、日本画コースの授業や課題でも基本的には麻紙を使用します。

麻紙にそのまま墨や絵具を塗ると滲んでしまうので「ドーサ引き」といって、水と膠(にかわ)と明礬(みょうばん)で作った「ドーサ液」を紙全体に塗る、滲み止めの作業を行います。

ドーサ引きの様子

ドーサ液が完全に乾いたら麻紙をパネルに水張りします。パネルに張り込むことで制作中に麻紙がよれたり波打ったりすること無く、常に描きやすい状態で制作を進められます。
ドーサ引きと水張りをして、ようやく制作するための準備が整います。

水張りの様子


写生を麻紙に写す

ドーサ引きと水張りが終わったからといって、麻紙にいきなり絵具を塗り始めるわけではありません。
この授業では事前課題として自宅で花の写生をしています。まずは、その写生からトレーシングペーパーに輪郭線を写しとります。

写生から輪郭線をトレースします

トレーシングペーパーに写した線を、水張りした麻紙に転写します。「骨描き(こつがき)」といって、面相筆などの先の細い筆を使い、墨で輪郭線を描きます。

骨描きの様子

筆の持ち方や手の動かし方などを先生に確認しています


下地づくり

骨描きが終わったら、絵具を塗るための下地として画面全体に胡粉(ごふん)を塗ります。
胡粉は貝殻を原料に作られた白い絵具です。乳鉢で細かく擦り潰し、膠と水を混ぜて使います。

胡粉に膠液を練り混ぜながら団子状にして、ここからさらに水と膠を加えます

胡粉を塗る様子、下地として塗るときは画面全体に均一に塗ります

塗った胡粉が完全に乾いたら、次は水干絵具(すいひえのぐ)を塗ります。
水干絵具で背景の調子をつくったり、ある程度のところまで色を塗り重ねていきます。

画面全体に水干絵具を塗っています

絵具を塗るための刷毛と、絵具を馴染ませるための刷毛を使い分けています

部分的に色を変えて背景を描いています


岩絵具で描く

ある程度まで水干絵具で描いたら、次は岩絵具を使って描き進めていきます。人によって違いはありますが、大体の目安として制作の中盤から仕上げまでを岩絵具で描くので、日本画制作のメインの作業とも言えます。
岩絵具については別の記事で山本雄教先生が紹介してるのでぜひ参考にしてください。授業並みに(一部は授業以上に)詳しく説明してくださっています。

岩絵具は同じ名前の色でも粒子の違いで色の濃さが違いますね

絵皿に岩絵具を出して、膠を加えます

指の腹で岩絵具と膠を練り合わせるように混ぜていきます

細かい部分は面相筆で。筆を使い分けて描いています

岩絵具一色につき絵皿を一枚使うので、机の上が絵皿でいっぱいになりますね

合評時に並べた作品です。同じやり方を習っても、作品には違いが出ますね


今回は日本画制作の基本的な流れをご紹介しました。
登場した素材についての説明をかなり省略してしまいましたが、岩絵具のように山本先生が今後の記事で詳しく紹介してくれるはずです。山本先生の記事もどうぞお楽しみに!