教員紹介vol.20 藤井聡子 先生

毎回、本ブログ上で本学通信日本画コースの教員お一人を
ピックアップし、作品と共にご紹介していくこの企画。


第20回は、
藤井聡子先生です。
東京・模写スクーリングをご担当頂いています
今年佐藤美術館で開催された先生の大きな個展にて作品を直にご覧になられた方も多いのではないでしょうか。
今回は、先生の学生時代の作品を含む5作品をご紹介頂きました。
年初めに新潟伊勢丹で催される桜の展覧会「サクラ、桜、さくら」展にも藤井先生ご出品です。そちらも是非!

より詳しい情報を知りたい方は、藤井先生のホームページもご覧下さい!!!


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藤井 聡子  Fujii Satoko
 担当科目:2
年次科目


















日本画を制作していなかったら、何をしていたのだろうかと思う時があります。
書道と美術ばかりにのめり込む私の姿を見て、母が美大受験を勧めてくれたのがきっかけで、この分野に飛び込みました。
大学で習学し始めた頃、あまりに一般的でないこの日本画について、自分自身も特殊な分野の勉強をしていると思っていました。
しかしこれこそが私たちに息づいている伝統であり、かけがえのない文化活動であることに気が付いたとき、もっと自負心を持って取り組まなくてはならないと思いました。
また、日本の歴史や気候風土に育まれた 素材の質感に直に触れて表現する行為は、新しい創作における可能性を秘めているように 思います。拙いながらもその試みを続け、自分にしかない表現で日本画の魅力を伝えることができたら幸せです。


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【作品紹介】






「この道」  1998年  170×215㎝

院展初入選作品ですので、大変思い入れがあります。
なにげない、どこにでもあるかのような風景です。心に写るその風景が、絵になるかならないか、そんなことも考えずに描いていたように思います。覚えたての揉み紙技法の楽しさや、大学での緻密な模写作業から解放された安堵感から、ひたすらにもくもくと制作した夏でした。「この道」は、今に続く道です。







「映翠」  2000年  F50号(91×116.7㎝)


ある時、日光の近くをドライブしていたときに見つけた風景です。その際の取材があまりにもラフすぎたためとても絵にすることができず、後日、再度日光まで行ってスケッチをしました。家の近所でも似たような風景を見つけることは出来たのでしょうけれど、水面の光輝く様子や写りこむものその全てが一致しての感動でしたので、その場所にいかなくてはならないような気がしました。ただ常々自然に勝る美しさはない、と感じているだけに、その感動を絵画化することの難しさを改めて痛感しながら描いた作品です。








「映ゆ」  2012年  215×117㎝


日本画という絵画技法は奥深く、いまだに材料のことを熟知して使いこなしていると思えることがありません。描く度に新たな発見と確信、思い通りにいかないもどかしさ、偶然にできた効果に驚くということを繰り返して今に至っています。感動を具現化するために、様々な素材の特性をどう組み合わせ交差させていくかが作家の課題であり、難しいからこそ思い通りの表現ができた時の達成感が大きくなるのだと思います。







「葡萄図」  2012年  77×37㎝



幼い頃から嗜んでいた書、かな文字を書くために作り始めた料紙、それらと日本画を組み合わせた作品を近年制作し出しました。ようやく形になり始めてきたように思います。どれも深化させてもっと充実した表現にしたいと望んでいます。
料紙に書きしたためる和歌は古今和歌集から選びますが、和歌に合わせて描くものを決めたり、描きたい植物に合わせて和歌を選んだり、普段の制作と異なる経緯を辿るところが面白いと感じています。
「夏と秋と行きかふ空のかよひぢは かたへ涼しき風や吹くらむ」凡河内躬恒
(訳文 夏が往き、秋が来る空の路では、片方に涼しい風が吹いているだろう。)







「桜図」  2015年  170×360㎝



装飾料紙をちらした桜の作品を描きたい、と学生の頃から思っていました。大きな会場での展示機会に恵まれ、また制作するための取材や、イメージを具現化するための技術も徐々に身に付き、やっと実現しました。でもこれがはじまりだと思っています。
古今和歌集で詠まれる桜といえば山桜のこと。山桜も随分探し回りましたが、意外にも家から数分のところにある手つかずの山桜の巨木がイメージに合いました。
桜を詠んだ和歌の中でも気に入っているものは「今年より春知りそむる桜花 散るてふことはならはざらなむ」紀貫之 (今年から咲くことを覚えた桜の花は、散るという習慣には慣れないでほしいな。)です。咲き続けてほしい、見続けたいと思われる桜を描きたいと思いました。



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【プロフィール】


藤井 聡子 (フジイ サトコ)



1974年  長野県生まれ 神奈川県育ち
1997年  女子美術大学芸術学部日本画専攻 卒業
1999年  財団法人佐藤国際文化育英財団 第9期奨学生
2002年  東京藝術大学大学院  保存修復日本画後期博士課程修了  博士学位(文化財)取得
     個展 レスポワール展 (銀座 スルガ台画廊)
2006年  第12回松伯美術館花鳥画展 優秀賞
2011年  個展「藤井聡子日本画展 -縷鏤-」 (銀座 みゆき画廊)
     再興第96回院展 奨励賞
2012年  第67回春の院展 奨励賞
     日中美術展 (東京美術倶楽部)
2013年  第1回郷さくら美術館 桜花賞展 (中目黒 郷さくら美術館)
2015年  個展「藤井聡子日本画展 -交差の軌跡-」(新宿 佐藤美術館)

現在   日本美術院 院友・文化財保存修復学会 会員
     慶應義塾大学・女子美術大学・京都造形芸術大学 非常勤講師


○藤井先生ホームページ→こちら